2037-04-01 Trackbacks:0Comments:0

冬の音3




冬は来た

2016-07-13 Trackbacks:0Comments:0

それはむしろ呪縛のように
足首へ絡むように
約束は
私たちを繋いだまま
在り続けた

今年の桜が萌す以前
貴方が笑って応えたこと
瞳の中 時間を確かめたこと
これからも きっと変わらないと
確証の一つもないことを口にした

微笑はどこか息を詰まらせたようで
その顔を前に 何も言えない私がいる

あの日 本当は見えなかった
あの日 薄明の中 見失った
この酷道続く先に 視た貴方の影

宙ぶらりんの私が
そこにいる気がするんだ

一つの戦史 2016-07-10 Trackbacks:0Comments:0

それは大樹のやうな
梢のやうな

水の衣の下で
肌 紅く焼けている。
眉は冷たく 確かに見ている
双眸の先 水平線上 射貫かれた太陽が
揺らぎボンヤリと くずれ、くずれ、
落城して逝くのを。

西を向いた横顔へ燈る 凛々しさが
昼の光よりも 確然としていて

貴方は梢のやうな
大樹のやうな
静かな情熱



奴隷 2016-07-09 Trackbacks:0Comments:0

かつて金で買ったお前に、今、
私は愛されたい
愛されようとしているんだ
私が貶めたお前に

オブラートの爪とシルクの髪
好きだったんだ、
その輪郭が、肌が、呼吸が、包む街が、水が、光が。
その全てが。

私はそれまで知らなかった
光を。
その在り処も、実在も、道程も。

お前を手に入れたそれだけで飽き足らず、今、心を欲しがっている。
寂しげな顔が いつまでも胸を打つせいで、
後悔も、死ぬことも、痛がることも、出来ずにいる。

何かを間違えたのだろうか?
私は私の有り様を憎みながら
腕に抱いた美しい宝石の光を
永遠に失い続ける。

どうだっていい 許されさえすれば

   どうか 死んだ後でもいい、
   お前に許されたら、
   私は、


礼拝 2016-07-09 Trackbacks:0Comments:0

真っ白な朝が来るとき
僕は生きていたくはないのさ

褐色の少女
橙色のロマネスク
昼の秘密を溶かして
やがて日暮れへ
蒼い街路

そこへ行こう
乾いた風へ
言葉も消えゆく場所へ

もう一度
真っ白な朝が来るとき
僕は生きていたくはないのさ

風船電車(スケッチで) 2016-06-28 Trackbacks:0Comments:0

日曜日の朝
電車の人々は沈黙の体を揺らし
車輌の冷房は綿の空気を吐き
窓に青い水田
せせらぎと泡沫

何もない朝に
疲れ果てていた、と気づく


風船電車 2016-06-28 Trackbacks:0Comments:0

日曜日の朝
薄明りを待ち侘びて
始発はズルリと動き出す
窓を透かし 陽光は暴いてゆく
沈黙の体に揺れる人々
その磨り減った真実

吊革繋いで ゆらりゆら
カタトンカタトン カタトントン

眩しさは
青い水田
せせらぐは
白い泡沫

後方へ消えていく実感を
見つめて 見過ごす
うつろな瞳を乗せた
風船電車





染まる 2016-06-11 Trackbacks:0Comments:0

「さあ、どうだろうね」
彼女の背中がそう言ったんだ
夕陽の中で溶けながら
消えていきそうな体ひとつ

嗚呼、また繰り返してくれ
可笑しなことを笑って
君に耳を傾けて
死んでいく世界
神社の境内で
私たちは笑っていた

消えそうな火は空を染めて
すぐそこまで、
あの山の陰の中
すぐ傍まで、来ている

明日を生きることを知らないまま
二人は一人 我武者羅に生きて
ここで 声を重ねた

可笑しいね
明日死んでしまうかもしれないのに
そう言って
はっとしたような
哀れむような
目を隠した

夕陽はぼやけて溶けた
そして死んでいった

明日の土へ還った
それは
いつ来るか
誰も知らない明日

last piece 2016-04-18 Trackbacks:0Comments:0

いつか死ぬ前に
君に触れたい
首にしがみついて
匂いを嗅ぎたい

いつか死ぬ前に
君と海に行きたい
暮れなずむ砂浜で
陽の反照に燈された横顔を知りたい

いつか死ぬ前に
永遠が欲しい
すべてが終わった後
在り続けるような君の翳

終わることなど
意味もなさなくて
ただ光のように
胸を満たして消えていける日
僕は

春風 2016-04-18 Trackbacks:0Comments:0

短くした前髪を揺らし
照れくさそうに
はにかんだ

音がする 海の

真っ白なおでこを見ていた
ぽう、と紅くなって逸らすから
たまらなくなって眉の上へ触れると
耳まで染めて怒るんだ

何だっていい
君のことならば
今も足りないぐらい

たまに嘘をついて
すぐにばらして
取るに足らないことを積み上げて
手に余るほど
何度も何度も 誓った

手を繋いで
君を知った
約束できるさ
行きたいところへ 行ける

2016-03-18 Trackbacks:0Comments:0

遠く離れた土地で
午前6時の藍色は
まるで同じだった
その時
何もかもが繋がっていると思った

穢れのない空
予感に満ちている
間もなく
一日が生まれる
まだ
何も知らず清潔な地上の街


ひとつ
またひとつ
夜を裂いた鉄道の轟き
燈される家々の明かり
ミルクを溶かすように
白む空気

世界は一歩前へ

こんな時間も
もう忘れる

死んだ日 2016-03-14 Trackbacks:0Comments:0

君の死んだ理由は
人の消えた街の中
乾いた水路と共に埋められた
いつか言ったんだ
こんな風には生きられない
ずっとは
続かないんだって

手から零れて
触れられない
君の白い手も
その髪の匂いも
薄明りの中で
終わりを迎えた

真っ白な朝に
夢も思い出せない
艶やかな感触
美しい動物たち
生命も純潔も
夕陽に奪われて沈んだ

その手に触れて
何にもないと知って
唇から溶けて
これは今だけのことって
何となく分かったんだ

その日
その感触が
朝の空白が
指先の熱が
永遠になった

無視 2016-03-13 Trackbacks:0Comments:0

ずぶ濡れの道路で
雨は聞こえなくなった
無数の光線に撃たれる
死んだ煙草の名残が匂う
一層増す混沌の中で
一人の僕が
単数か無数か
街と僕の境界は溶けた

夜が地上をつぶして
真っ暗の海にする時
奇妙な光がチラついた
闇の隙間に何がある?
歩行のリズムが繰り返されるうち
小人のようなそれは飛び出してきた
気づかないほど些末
世界のヒント
縦横無尽に飛び交うそれを
目で追いながら愚直にまっすぐ家へ歩く

光に居た 2016-02-23 Trackbacks:0Comments:0

ひとつふたつ
諦めを重ねながら
歩きつかれ
気づくと
意識の闇の底
暗澹たる景色の中に居た
仄暗いひび割れ
喧騒の隙間
無機質な路地
濡れた酸素
黒い静寂

一番深く暗いところから
頭上を仰いで目を細めている
そこにはただ暗い天井がある
空はない
ここは閉ざされた夜

それでも見上げる
苦しいほど感じる
思い出すほど
光を意識する
空を探せば
鮮明な熱と感触が甦る
光の中に居た記憶があった
あの日々
僕は確かに光の中に居た
ずっと
恋焦がれながら生きていた


濃密な暗闇に潰されて
それでもなお
不思議と眩しさを覚えて
熱を持った幻視に
目をやられる
もしもこの天井の先まだ空があるとすれば
そこにずっと変わらないものの面影を見る
一筋の光でいい
たった一つ
失くした思い出を確かにするものがほしい

残光 2016-02-14 Trackbacks:0Comments:0

いつだって手探りだった
言葉も内臓も吐き散らして
汚い床に散らばって
そこへ手を突っ込んで
今は泣きそうなほど
探しているんだ
もう一度・・・

嘘だと言ってくれ
信じてると言ってくれ
求めているよ
君の頬
睫の雫
それらが生活だった日々
取り返せないものほど
僕を殺し続けるばかりさ

なんでもいいさ
体でも心でも
干乾びた手で
骨のような指で
冬の土の中

あれだけ無駄に死んでいった言葉が
今も僕を縛り続けている
車に乗ってどこでも行ける
それでも
どこにも行けなくなったんだ

まだ
待っていた